わかりやすいプレゼンテーションとは? 生命科学

 

 

 

 

 

1.  自分の研究の面白さを、誰にでもわかってもらえるように説明するにはどうしたら良いだろう?

 

 

 皆さんは今後研究室に所属し、興味を持ったテーマについて研究を行っていきます。研究室へ入ることを楽しみにしている人も多いと思います。研究室では指導教官の先生をはじめ、その分野に詳しい先輩達とディスカッションをしながら研究を進めていきます。また、学会で研究の成果を発表する機会もあるでしょう。準備や勉強が大変ではありますが、刺激を受けることが多く楽しい時間です。

 研究室や学会で出会うのは専門を同じくする人達であり、共通の知識や考え方を持っていることが多いので、あなたの研究の面白さや重要性を比較的簡単に理解してくれます。(もちろんその分鋭い突っ込みが入るわけですが)。研究室では主にそのような場合に効果的なプレゼンテーション、ディスカッションの仕方を身につけていくことになります。

 しかし、専門外の人に自分の研究の説明をしなくてはならない局面も意外に多く存在します。就職活動で自分の研究内容を簡単に説明しなくてはならないこともあるでしょうし、就職後、別の部局の人や顧客に対して、仕事で行っている研究の説明を行う場合もあるでしょう。あなたが素晴らしいアイディアを持って起業を目指す時には、そのアイディアをわかりやすくアピール出来なくてはなりません。

 研究内容の説明という点では基本的に同じなのですが、知識や考え方を共有しない人を対象に説明をする時には、学会等での発表とはまた異なった工夫が必要になります。研究室に入った後、お正月など帰省した際に、親戚のおじさんに「山形大学でどんな研究をしているの?」と聞かれたらどう答えますか?あなたの研究の面白さや重要性を理解してもらうためには何をどう説明をしたら効果的だと思いますか?

 この授業では、それぞれの設定されたテーマについての調査を行い、その内容と面白さを、誰にでもわかりやすく説明できるようにするためにはどうしたら良いのか追求していきます。

 


2.  人に説明できるようになるためには必要なことは

 

 あるテーマについて人に説明できるようになるためには、自分がそのテーマについて十分に理解していることと、その理解した内容を人に効果的に伝えるための工夫をすることが必要になります。

内容を理解する

 iPS細胞」について説明をするとします。iPS細胞について書かれた文献はたくさんあるので、そこに書かれている文章を暗記して、「外部から遺伝子を導入することによって人為的に作り出された多能性の幹細胞です」と説明することはそれほど難しくありません。しかし、「遺伝子を導入するってどうやるの?」「多能性ってどういうこと?」などの疑問に答えるためには、この文の内容を理解している、つまり、簡単にまとめられた一つの文の裏側にある多くの事柄までわかっている必要があるのです。

面白さを理解する

 面白さ、または重要性と言っても良いでしょう。

 例えば培養細胞を利用した新しい再生医療技術が開発されたとします。これまでにも似たような技術はたくさんありましたが、今回はこれまでの技術と何が違うのでしょうか?今まで治療できなかった部分を初めて治療できるようになったのか、安全性が高まったのか、この研究をしたことで、いったいどんな大きな問題点が解決されたのでしょうか?

 どんな研究にも、必ず行った理由があります。それがどれほど画期的で面白いことであるのかを理解して、初めてその研究について他人に説明をすることができるのです。また、そのためには研究の背景についての知識を広く持つことも必要となります。 

伝え方を工夫する

 伝えるべきテーマについて自分なりの理解ができたとします。それでは、その研究のおもしろさを今度は別の人に伝えるためにはどのような点に注意することが必要でしょうか。

 最も重要なことの一つは「誰に対して伝えるのか」を考慮することです。専門用語を使用した方が的確に伝わる相手なのか、日常に使う言葉に噛み砕いて説明した方が良い相手なのか、また、研究の背景はどこまで説明した方が良いのか、などを考える必要があります。さらに、相手によって、その研究成果のうち、「病気の治療につながる」などの実用的な側面を重要であると考える人もいれば、「細胞間情報伝達に関わる新規の分子を発見した」などの基礎的な部分を面白いと思う人もいます。その研究が生み出すビジネスチャンスに興味を持つ人もいるかもしれません。本質的な内容は変える必要はないのですが、相手が最も理解しやすいポイントはどこかを常に考えると良いでしょう

 また、特に話をする場合に重要になるのは、「どんな順番で説明するのか」です。文書であれば、難しいと感じた箇所に戻って読み直すなどが容易にできるため、情報を受け取る側のペースで内容を理解することができます。しかし、口頭で説明する場合は、基本的に情報を伝える側のペースに従うことが多くなります。一連のストーリーとして聞くことができるように説明をするなど、相手が理解する過程で負担をかけないためにはどうすれば良いのか、工夫をしてみましょう。

 

3.  この授業で行うこと

 

 この授業では、発表されている研究などについて文献などを調べ、その内容をレポート形式およびプレゼンテーション形式にまとめ、発表をするトレーニングを行っていきます。

テーマの選択

 テーマは教員の専門である生命科学の分野から選択します。

 まず、こちらで用意した2〜3題のテーマについて調査、発表の練習を行い、その後に自分で調査、発表するためのテーマを設定してもらいます。興味のあるニュースや将来行いたい研究内容に関連したテーマなど自由に選んで下さい。

 将来生命科学を専攻する予定ではない人ももちろん歓迎です。生命科学に関連しているテーマに興味を持っている人は積極的に参加して下さい。

 基本的に文献等の資料を用いた調査を想定しています。実験などを必要とするテーマを希望する場合は、設備の問題などから実行できない場合がありますのであらかじめ相談して下さい。

調査

 テーマを選択する時は新聞記事などのニュースが手がかりになります。しかし、新聞の記事を書いたのはあくまでも記者であり、記者が専門家から説明を受けて理解した(と思った)内容が書かれています。新聞記事はどんな研究や発見が行われているのかを簡単に知るためには大変便利ですが、正確な調査を行うためには別のアプローチが必要となります。

 調査には、なるべくその研究に近い人の書いた資料を使用することが良いでしょう。理想的には原著論文(その研究を行った本人が発表した論文)にまであたることができれば良いのですが、英語で書かれたものが多いので(自信のある人は挑戦してみて下さい)その分野の専門家の書いた総説や書籍を利用することになります。また、たとえ日本語であっても、知らない分野の話はただ読んでも理解することができないことが多々あります。そのような時は、より一般的な教科書などを参考にしましょう。

 具体的な資料の利用の仕方などは、授業中に詳しく解説します。

レポート

 調査したテーマについて自分がどの程度理解できているかを確認するためにも、効果的な説明方法を模索するためにも、調査の結果をレポートとしてまとめることは非常に有効な方法です。

 「なせば成る」で学習した、「どのようにレポートを書けば良いのか」についての知識を用いて、実際にいろいろなテーマについてレポートを作成してみてください。特に、レポートとしての形式が整っているか、内容がわかりやすく説明されているかの二点を重視します。

 作製したレポートは少人数のグループの中で回覧し、お互いに添削を行います。添削する際には、先に述べた形式とわかりやすさを基準とします。お互いに添削をすることで読みやすい形式とはどのようなものかを理解していきます。また、異なる視点から書かれたレポートを比較し、わかりやすい説明とは何かを考えて下さい。

プレゼンテーション

 わかりやすいプレゼンテーションを行うためには、準備の段階(調査と理解は十分か、構成はよく考えられているかなど)から、その場での演者の発表の仕方まで、様々な要素が必要となります。「なせば成る」で学んだ方法論をぜひ実践して下さい。

 実際に自分で行ってみると、うまくいかない点がたくさん出てくるでしょう。レポートの場合と同様に、お互いのプレゼンテーションの良い点、改善すべき点を評価しあって下さい。その中から、自分がわかりやすいプレゼンテーションを行うために必要なポイントを発見していって下さい。また、他人のプレゼンテーションを的確に評価するためには、自分の理解する能力を磨いていくことも必要になります。

 グループの中でプレゼンテーションを行い、最も良いと考えるものを選出します。発表したテーマの内容とそのおもしろさとが、聞く側にいかにわかりやすく伝わったかを評価の基準とします。さらにグループの代表の中からクラスで一つプレゼンテーションを選出し、「社会人基礎力をみがく」全クラス合同で行われる大会で発表してもらいます。是非、一番おもしろいプレゼンテーションを目指して下さい。